南の楽園・サイパン旅行記 後編




夜明け前のとんでもないノープロブレムっぷりに加え、街のほうから「ドォーン!」という景気のいい爆発音が鳴り響いてきたりしてなかなか寝付かれなかった私達。それでもなんとか眠りは訪れ、起きたら11時でした。

ありえません。普段の私なら十分ありえますけど(それも問題)、海外旅行でこんなに寝坊するなんて。時間がもったいないです。信じられません。

なのにちっとも悔しくないのはなんでだろう。

その理由↓


うかうか歩いてると吹き飛ばされます。


わぁー昨日なんか目じゃないぐらいヒドイや!

写真ではイマイチ伝わらないですが、28日の天候は本当にひどい状態でした。誰ですか、明日になったら台風一過で晴天だなんて能天気なこと言った奴!(お前)初の海外旅行に胸膨らますYちゃんに、サイパンの自然の美しさをこれでもかと聞かせた奴!(お前)これじゃただの嫌がらせじゃないですか。ごめんね、Yちゃん。

これでは海はおろか散歩もできません。なので仕方なく、大型デューティーフリーに買い物に行くことにしました。ホテル玄関から無料バスが出ているので、途方にくれた顔で1階へ。

フロントを通りかがると、急遽出してきたと思われるホワイトボードに台風の進路や規模、現在の状況など様々な情報が張り出されていました。

『トロピカルストーム 台風8号情報』

名前だけは無駄に南国だね! 外こんなんなのにね!→

確かに強風にもぎ取られて飛んでいくまだ青い椰子の実や椰子の木の一部分(枝とか、幹とか)なんかは南国と台風の二つの要素を上手く表現してましたけど、あんな見事なコラボレーションもう見たくありません。

ちなみに本当は、“タイフーン”だったようです。サイパンの台風の規模を表す言葉はいくつかあるようで、トロピカルストームは最大風速 34〜63ノット、風速64ノット以上の場合はタイフーンと呼どうでもいいですねこんな話。

さらに付け加えると海外では台風に名前があるのが一般的ですが、この8号の名前は「TingTing(ティンティン=中国の女の子の名前)」。まあかわいらしい(般若顔で)。

そしてこのとき、フロントのあちこちで、荷物を隣にぐったりと座り込む人々がたくさんいました。ホワイトボードには、多数貼り出された各航空会社の欠航情報。……そう、この時点で、かなりの人が日本に帰ることが出来ない状態だったのです。

飛行機に欠航便が出たのは昨日(27日)から。月曜日から仕事に出るつもりだった方が多かったのでしょう、フロント辺りはてんやわんやな状態でした。それを横目に「大変だねぇ…」なんて同情しつつ、まだ他人事でいられた昨日が懐かしい。

 だって今日こんなんだから→ 

私達の帰国は明日。飛行機は朝の9時の便。一抹の不安を抱きつつ、気持ち悪いほどのプラス思考人間a+r、「今日には通り過ぎるから明日は大丈夫だよ」とまたも根拠のない決め付け。数時間後に誰ですかそんな能天気なことを言ったのは!(お前)と脳内会議が繰り広げられることも知らずいい気なものです。


デューティーフリーはグッチ、エルメスなどハイブランドのショップが集まる場所ですが、私達3人はブランドにあまり興味がない人。長い時間楽しく過ごせるかどうか、微妙なところです。ホテルから歩いて5分ほどの距離ですが、椰子の木が根元から倒れるほどの強風とバケツをひっくり返したような豪雨のなかでは、降りるまでにバスで15分ぐらいかかりました。入る前からもう楽しくないです。

入店すると、シーズンオフにもかかわらず店内にはたくさんのお客が。シーズンどころかサイパン島の魅力が98%ぐらいオフってるこの有様ですから、天候関係ない大型店に人が集まるのは当然ですね。店内にいると外が大荒れだって忘れていられるし。でも併設のハードロックカフェの窓ガラスからヘビメタバンド並みに葉っぱを振り乱す椰子の木を見て現実を思い出したりするんですけどね。

とりあえず夕方までデューティーフリーで過ごした後、ホテルへ戻りました。夕食をどうしようかなどと部屋で話しているときに、HISのスタッフから電話が。

スタッフ「残念ながら、明日の朝の便が欠航になりました。
      いつ帰ることができるのか、今のところはっきり分かりません」

27日の晩餐。ライブロブスターのスチーム。

28日の晩餐。どん兵衛、UFO他


私達の投げやり加減を感じて頂けると嬉しいです。


南の国でのバカンスが伸びたというのに、なんだろう、全然嬉しくない。

こんなんだからね→ 


それに加え、台風という不測の事態&格安ツアーのため、HISからの補償は一切ありません。従って延泊代、食費等は全て実費。海外保険の「飛行機遅延」で2万円出るものの、延びれば延びるだけ痛いのです。保険の期間もきれちゃうし。

※「飛行機遅延」は保険のオプションみたいなもので、見落として入ってなかったりするケースが多いようです(実際、保険は入ってたのに遅延の補償はなかった人達がけっこういました)。私はネットで保険に加入したんですが、プラス30円で「飛行機遅延」の補償対象になるのを見て、「一応入っとくか」と加入したのでセーフでした。危ないところだった……。

ちなみには28日の食事は、金八レストラン隣りのコンビニで調達してきました。ホテル玄関から、走って10秒ぐらいの場所です。Yちゃんと2人でバスタオルをかぶって行ったんですが、強風にあおられて人間凧のような状態になるわ、雨は冷たいというより痛いわ、道路が池のようになっていてビーチサンダルがぬげて流されそうになるわ散々な目に遭いました。

しかし、いつ帰ることができるか分からないという状態というのは、想像していたよりもずっと重く心にのしかかってきます。私とTちゃんはフリーで仕事をしているのでまだいいとして、問題はYちゃん。Yちゃんの有休は明日(29日)まで。明後日には出勤する予定だったのです。明後日はまずいことに月末で、事務員であるYちゃんには果たすべき仕事が待っている。Yちゃんの代わりを務めてくれるような、頼もしい後輩はいない。責任感の強いYちゃんには、台風だから仕方がないと割り切れない事情があったのです。

最悪でも30日の夕方に会社へ着けばなんとかなる、とYちゃん。だから、30日の朝の便がとれればいい。なんとかしてくれ、と私も祈りました。

そして次の日(29日)。昨日よりはマシとはいえ、雨・風ともに絶好調。ふてくされて、コンビニで買ったお菓子やビールなどを喰らっては、Kくんとデカレンジャーやポケモンごっこを本気でやって「a+r怖すぎるからもっと大人しくやってよ!」と怒られては、唯一の日本番組・NHKニュースを見ては…………

こんなに時間がたつのが遅い旅行は初めてです。

  一夜明けて台風が去ったサイパンの町は、けっこうすごい有様でした。あちこちで木が倒れ、窓ガラスが割れ、看板が落ち、電線がダメになり、にわか仕立ての池・川を作り……。
鹿も途方に暮れてます。
前編でTちゃんがカンガルーと間違えたのはこの鹿でした。

夕方近くになって、ようやく雨が上がりました。飛行機も、ほとんどの航空会社が運航を再会した様子。明日の便が取れるのかどうか気になり、HISに連絡したのですが「ノースウエスト航空(私達が乗る予定の航空会社)の予定が全く出ていない」とのこと。部屋で連絡を待った方がいいのかとも思いましたが、我慢できずに部屋を飛び出す私達。行き先はホテルのプライベートビーチです!

どんより曇り空で気温も低く、海水浴日和とはとても言えませんが、サイパンに来て一度も海に入っていないという現実を打破できることに比べたら、そんなの大した問題じゃありません。曇り空がなんだ!ビキニがなんだ!そんなこと大した問題じゃない!!(半分言い聞かせてます)

ビーチには、私達と同じように「サイパン旅行なのに海に入っていない現実を打破したい人々がたくさんいました。見事に濁った海で一生懸命楽しんでいる彼らを見て、あなた達は私の同志だよと勝手に親近感を抱きつつ、Tシャツを脱ぎ捨てて海へと走る私。

やった……海だ……海だああああああ!!!




こんなに命がけの海水浴も初めてです。

台風の影響で波が高いのなんのって。あんな荒々しい漢なビーチ、なかなか体験しないですよ。4歳のKくんは途中、本気でおびえてました。波にさらわれてゴロゴロ転がったりしながらも、海に入れたという事実にとりあえず満足。

南国の海とたわむれた(こう言うとすごく素敵な感じですね)あとは、近くのお店でテイクアウトしたラーメンや中華飯などを食べ、時刻は21時を回りました。

……この時間になっても明日の朝の便の詳細がわからないノースウエスト航空って面白いですよね。これが本場のアメリカンジョークか貴様ぐらい言ってやりたくなりますよね。

結局連絡が入ったのは22時すぎ。しかも、明日の朝の便(名古屋・小牧空港行き)は全て満席でダメ、私達より前に足止めされている方たちが大勢いるので明後日7月1日の便はおろか、下手すると2日の便も難しいかも…というプラス思考を丁寧に潰していく内容。

今日(29日)の朝から運航を再開し、通常便の他にサイパンに足止めされている人たちを運ぶ救済臨時便をいくつか飛ばしているJALと比べると、1日1本の通常便のほか臨時便は一切なし、小牧空港着でなく関空もしくは成田着の便に変えると正規の航空代(4万ぐらい)取りまっせというノースウエスト航空の対応には心底ガックリきました。

さすがJAL、1日、いや半日の違いで窮地に立たされる日本社会をよくわかっていらっしゃる。アメリカンなノースウエスト航空は、バカンスが伸びてよかったデスネーとでも言いたげですもん(被害妄想入り中)。

これをバカンスと呼んでみやがれ→ 


どうしても30日に帰りたいYちゃんは、空きが出る可能性があるJALの関西空港行きのキャンセル待ちをすることに。それが30日早朝6時の便で、深夜2時頃みんなで空港に行き、ガーデニング頑張ってます!といわんばかりのこじゃれた座りにくい椅子でひたすら待機。空港の外にはろくな椅子がなかったんです。

耐えたかいあって席は確保。しかし、ノースウエストからJALに変えたため、正規の航空代がかかってしまいました。それが旅行代より高いなんて、アメリカンジョークにもほどがあります。

初めての海外旅行でこんな散々な目に遭いながらも、最後まで「迷惑かけてごめんね」と私とTちゃんに謝りながら、Yちゃんは一足先に日本へ帰国。文句ひとつ言わず、Yちゃんを励まそうとしていたいじらしいKくんを連れてホテルへ戻りました。

そして次の日。目覚めたら10時過ぎでした。心身ともに疲れているので、時間がもったいないとかもうどうでもいいです。

コンビニで買ったサンドイッチをもそもそ食べていると、サイパンに来て初めてともいえるギラギラ元気な太陽がお目見え。これが一昨日、せめて昨日なら、ギンギンギラギラパ〜ラダ〜イス♪とか歌ってパラダイスはアンタの頭だというほどアホ全開に喜べたのに。青い海を見ることなく高額な料金を支払って帰っていったYちゃんのことを思うと、苦笑いしか出てきません。

だけどせっかくなのでプールに行こうと着替えをすませ、部屋を出る前に念のためHISに連絡を入れてみました。するとHISスタッフから驚くべき言葉が。

スタッフ「小牧行きは明日も明後日も難しい状況ですが、本日17時の成田行きの便なら席が確保できそうです。
     ノースウエストとかけあって、着陸場所が変わっても追加料金がかからなくなりましたので。
     もしこの便に乗りたいようでしたら、14時までに空港に来てください」

そういうことはもっと早くにそっちから連絡してくれ。(だって今12時ダヨ!!

成田行きだろうが、日本に帰れるならなんでもいい。それほど私達は疲れていたので、その話を快諾。しかし今日帰れるとは思っていなかったので、荷物の整理はまだしてませんでした。だけどプールには入りたい。猛スピードで荷物をまとめ、40分ほどプールを堪能してから、プールサイドに設置された簡易シャワーだけをサッと浴びて着替え、猛ダッシュで空港行きバスに乗車。ドリフの幕間の音楽が似合いそうな忙しさですちゃちゃちゃちゃっちゃらちゃちゃちゃっちゃらちゃちゃちゃっちゃらちゃ)。

サイパンに行く前、あれほど気にしていたビキニですが、ビキニを恥ずかしがってる暇などありませんでした

私達が乗ったのはノースウエスト航空・サイパン17:30フライトの成田行き。日本に帰れる喜び(普通ならこんな気持ちありえない…)に、フライト時刻が大幅に遅れて19:30になろうが、プールの塩素で肌がカピカピになっていようが気になりませんでした。フライト中、Kくんとクイズごっこをして、
「シンデレラが舞踏会から帰るとき、脱げてしまったものはなんでしょう?」「スカート!」
という愉快な答えに悶絶したりして3時間後、成田空港に到着。

時差があるので、日本時間は21:30過ぎ。空港の大きな電飾掲示版で時刻表示を目にしたとき、やっとこさ日本に帰ってこれたことに浮かれていた頭が一瞬にして冷えました。

この時間に帰れる公共機関ってあるのか……?

嫌な予感は的中。成田空港のインフォメーション職員に「遅延証明書」を書いてもらいながら(保険会社へ請求するときに必要なんです)尋ねると、新幹線はもちろんのこと名古屋行きの深夜バスの最終便に間に合うかどうかのギリギリ。なので、またもドリフの黒子状態。

成田空港から東京駅までリムジンバスで1時間30分強。最終の深夜バスは東京駅23時40分。ものごっつーギリギリです。手に汗握りながら時間が過ぎ、リムジンバスが東京駅に到着したのは……23時39分!

停車場所からまたもダッシュで駅へと走ると、駅入り口のバス停で名古屋行きの最終深夜バスが今にも発車するご様子で停まっているのを発見!慌てて駆け寄ると、若い職員に止められました。

職員「乗りたいなら切符を買って来て下さい」

やってらんない。

ドリフ状態を幾度も繰り返し、疲れきっていた私達。んなもん買ってる間に出発するだろうがよ!と反論する気力を奮い起こしている途中で、最終深夜バスは目の前で走り去っていきました。

呆然とする私達を横に、若い職員は「こんなギリギリに来るアンタ達が悪いんでしょ」と言いだけな顔。アンタは私達が塩素まみれなのを知らないからそんな顔ができるんだ。カピカピなんだよ!塩ふいてんだよ!

切符を買っていない私達が悪いことは分かってます。でも、でも、憎らしいほど任務に忠実なこの人と、ノースウエスト航空のアメリカンな重役たちに脳内で電気あんまをかけながら「お前らは私達と一緒にドリフ走りしながら遅延証明書を書いてくれた成田空港の職員さんを見習え!」と言いたい気持ちでいっぱい。

結局この日は帰ることが出来ず、Tちゃんの義妹で葛飾区に住んでいるSちゃんのお家に泊めてもらうことに。深夜に突然押しかけたのに笑顔で労ってくれた上、朝5時という正気を疑う時間に家を出る私(仕事の関係で朝イチで家に戻りたかったんです)を快く車で送ってくれたSちゃん、本当にありがとう。

翌朝、6時台の新幹線で名古屋へ。座席に沈み込み、ようやく自宅に帰れる安心感に浸る私。しかし、この休暇で私を癒してくれたのは、青い海でも色とりどりの魚でもなく新幹線から見た富士山だったというのはすごく間違っている気がします。

重い荷物を引きずりながら、やっと帰ってきた我が家。この平凡なコーポがこれほど輝いて見えたことが今までにあるだろうか、いやない!(反語)とりあえずベットに飛び込んで、このとんでもない旅の疲れをしばし癒してから、仕事の電話をして……


  鍵を預けてたこと忘れてた。

早朝に出てきた意味まるでナシ。相方が仕事の合間に助けにきてくれるまで、近所の喫茶店で時間を潰しました。
ああそうか、私はこのモーニングを食べるために早起きしたんだな!(自棄)


最後の最後までネタにまみれ、心の底から疲れた旅行でした。日本にいたほうがよかったと断言できてしまう旅行なんて切なすぎます。 サイパンは私にとって、初めて訪れた異国の地であり、鮮やかで輝くようなイメージがあったのに、いまのイメージは鉛色これはちょっと悲しすぎるので、いつかこのイメージを払拭するリベンジ旅行に行きたいものです。まあ当分いいですけどね……(トラウマ)。

今回、わがままも言わず頑張ってくれた4歳児Kくん。彼はこんなことを言っていたようです。

「サイパンってすごく暑いって聞いてたけど、ホントは涼しい

その認識は正しいけど間違っている。

帰国後、私の不運を察知したのばらさんから励ましメールをもらったのですが、のばらさんが訪れたサイパン観光掲示板によると、10年に一度の台風だったとか。お隣のグアムでは記録的な大雨となり、大変な被害が出た模様。

無事に帰ってこれて何よりだと思います。逆に3万円で10年に一度の台風を見にいけたんだ!というポジティブシンキングはどうでしょうか?

ありがとうのばらさん。アタシ、頑張る!

余談ですが、サイパンより日本の太陽の陽射しほうが数倍強いことにも凹みました。それと、駅に今どき珍しいコテコテのギャルがいたのですが、


どんより鉛色のオーラが出ていたことでしょう


明らかに彼女のほうが南国帰りに見えることにも凹みました。


ネタの神様は、やりすぎると引かれることに早く気付くべきだと思います。


(7/13 '04)


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