南の楽園・サイパン旅行記 前編
滞在中に何が起こったのか、察知している方から見ると自虐的ともいえるタイトルで始まったサイパン旅行記。サイパンを旅するきっかけは、新聞に掲載されていたHISの広告でした。
その広告には、HISの支店オープン記念として、日時限定&人数限定の特別プランが多数掲載されていたのです。中でも目を引いたのがサイパン。3泊4日で3万円(ホテルのグレートを上げて+5000円)とリーズナブル→日程は土日を含んでおり、仕事のことをさほど気にせず行ける→行くっきゃない!と分かりやすい思考回路を経てサイパン行きが決定しました。
メンバーは私と同じくフリーランスで仕事をしているTちゃん(相方の上の妹)と、会社勤めだけれど有休が取れたYちゃん(相方の下の妹)、もうすぐ5歳になるTちゃんの息子Kくん、そして私の4人。私たちは年が近いこともあり、よく飲みにいったり旅行したりする仲良しな間柄なのです。
しかしやはり安いツアー。3泊4日とはいえ、出発日の26日は名古屋20時フライトのサイパン深夜着、帰国日の29日はサイパン9時フライトの名古屋11時着。サイパンで遊べるのは実質2日間というちょっと残念なスケジュールでした。まあそれでも、青い海があれば十分リフレッシュできます。私たちは期待に胸を膨らませながら、日本を後にしました。
機内でサイパンに帰国する親子が近くの席に座っていました。娘である5歳の女の子とお菓子を交換したりボディランゲージ全開で豪快に会話したりしてとても仲良くなり、おうちの電話番号まで頂いてしまいました。こういうふれあいは旅の醍醐味。幸先のよいスタートだ!と嬉しくなり、ホテルへ向かうバスの中でも笑いっぱなし。幸運がそこで尽きていたことも知らずに……。
実は私、サイパンを訪れるのは2回目。1回目は10代後半のときで、当時の私にとって初めての海外でした。抜けるような青い空、透明度の高い碧い海。見るもの全てに目を奪われ、やること全てに感動を覚えたものです。特に体験ダイビングは、初めて垣間見た美しい海の世界に感激し、帰国後にダイビングのライセンスを取得してしまったほど。同じ部屋で過ごすYちゃんに、サイパンの海がどれほどキレイだったか、どんなに楽しいときを過ごしたかを語る私。Yちゃんは今回初めての海外旅行。夜闇に隠された美しい景色を想像して、胸を高鳴らせていました。
そして迎えた朝。カーテンの向こうには、眩しい太陽と真っ青な空が待っている!意気揚々とベットから飛び降り、窓辺へ駆け寄りました。さあ、常夏の島サイパンよ、その姿を見せてくれ!

ゴォーーーーッ
( ゜Д゜) ポカーン
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なんで横殴りの雨模様が目の前に展開されているのか分からず、カーテンを握り締めて呆然とする私。あの日見た青い空は、眩しい太陽は一体どこに?カーテンを閉めてもう一度開ければ大道具さんが青空をセットしてくれるんじゃないかなどと現実逃避をしたくなるような光景です。ビーチどころか、目の前の「金八レストラン」にすらたどり着ける気がしません。 |
![]() そのネーミングセンスはどうなのか |
昨夜「日本じゃないところにいるなんて夢みたい!」とはしゃいでいたYちゃんは、別の意味で夢みたい……いやどちらかというと夢であってほしいという顔でぼんやりベットに座っていました。とりあえず、テレビで現地の天気予報がやっていないか確かめることに。チャンネルを数回変えると、予報らしい番組を発見!


見てない、サイパン島が丸ごと巨大な渦に飲み込まれてる天気図なんて私は見てない!
必死で自分をごまかしながら、隣の部屋にいるTちゃん&Kくんと合流。空模様は不安定で、雨が止み陽がさしかけたと思ったら、強風とセットの豪雨に見舞われたりと、お前ちょっと落ち着けやと言いたくなるような状態です。
浮かれてあんまり気にしていなかったのですが、確かに昨夜、移動中のバスの中でHISのスタッフが台風が近づいていると言っていました。英語が話せるTちゃんがホテルスタッフに尋ねたところ、この台風は今日の夜に上陸するとのこと。今日はもちろん、明日も天候が崩れる可能性が出てきました。
ガッカリしながらも、例の根拠のない「なんとかなるさ」精神がフル稼動。明日は海で遊べるから(根拠なし)、今日はレンタカーでサイパン島を見てまわろうという結論に。
お昼にステーキハウスで食事している途中、少しだけ晴れ間がのぞいたため、途端に元気になる私たち。喜びのあまりYちゃんは「サイパンに乾杯!」と言おうとして「サイカンにぱんかい!」と叫ぶなど微笑ましい浮かれっぷりを見せてくれました。
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運転免許証を唯一持参していたYちゃんが運転手、そしてサイパン経験者ということで私がナビをすることに。経験者といっても、生まれたばかりの赤ん坊が多感な小学生になるぐらいの時間がたっている上、地図をひっくり返す典型的な「地図が読めない女」なので迷わないか不安でしたが、サイパンは雄大な自然が売りの田舎町。主要道路が限られており、しかも大変分かりやすい。 |
右側通行に慣れず、何度か逆走しかけながらも市街地(といっても寂れてますが)を抜けると、左右を豊かな緑が囲みはじめました。メインロード沿いは多少整備されていますが、少し離れると人の手が入っていない剥き出しの自然。ジャングル探検などのオプショナルツアーがあるのも頷けます。 |
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| メインロードの途中、牛やら馬やら犬やらいろんな動物と遭遇。耳の大きなサイパンの牛(写真左下)は、とても大人しくてキュートでした。そういえば市街地にいたとき、Tちゃんが「あっ、カンガルー!」と叫びましたが、そんなことはありえないので数にはいれません。写真右下はスーサイド・クリフ。 |
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目指すはサイパン最北部に位置するバンザイ・クリフ。真っ青な太平洋に切り立つ絶壁という、壮絶なまでに美しい眺望が広がる景勝地です。
![]() 確かに壮絶だ |
ザッパーーーン |
なんかもう今にも東宝映画が始まりそうな感じです。
天候が穏やかだったのはドライブの最初の頃だけで、徐々に雨が降り始め、バンザイ・クリフに到着した頃には気を抜くと吹き飛ばされてしまいそうな爆風が吹き荒れており、北陸・日本海の東尋坊とタメをはる荒々しさ。青いのは海ではなく私たちの顔だったりするんですが、とりあえず見学。
「バンザイ・クリフ」という名前は、今の天候がお手上げ状態だからでは決してなく、第二次世界大戦末期、追い詰められた多数の日本兵士が「天皇陛下万歳!」と叫びながら身を投げたという悲しい歴史に由来しています。スーサイド・クリフも、たくさんの日本人が自らの命を絶った場所。美しいけれど日本では決してないことを常に突きつけてくるこの景色を見ながら、どんな気持ちで身を投げたのか。そう考えただけで胸が苦しくなりました。

そばには慰霊碑が立ち並ぶ
髪の毛がメドゥーサのように荒れ狂っていなければもう少しゆっくりと過ごしたい場所でしたが、強い雨まで降ってきたので仕方なく退散。
![]() 池のようになってきました |
このとき時刻は15時頃。ここから本格的に雨が降り始めました。市街地へ戻る途中スーパーマーケットに立ち寄り、調味料やらお菓子やらお土産のコーヒーなんかをどっさり購入。スーパーマーケットの入り口近くに、色あせたすんごくやる気のない子ども用乗り物(よくデパートとかにある100円入れて動かす車の乗り物)があったのですが、へっぽこ極まりない乗り物がなぜか甥っ子Kくんの心にクリーンヒット。乗ることになりました。 50セント入れると、鈍い音を立てながら動きはじめたんですが、後ろの壁にガンガンぶち当たってました。明らかに設置場所を間違えてます。 サイパンは海がメインですから、お店は一様に寂れてるか、やる気がないか、センスがないんですよね。サイパンで海に入れないというのは、旅行者にとって相当な痛手だなあと、壁にぶち当たる乗り物を見ながら(無駄に動作時間が長い)改めて感じました。 |
夜は奮発してロブスターを食し、ホテルに帰還。明日は青空を拝めるように祈りながら、ベットに入りました。
そして皆が深い眠りのなかにいる早朝4時30分頃。事件は起きたのです。
私は夢を見ていました。室内のクーラーが壊れ、ブーッという非常用ブザーのような大きな音を立て始め、驚いている夢でした。夢なのに肝を冷やすような夢でした。
ブーーーーーーーーーッ

うわぁビックリ!ホテルの緊急ブザーが大音量で鳴り響いてますよ!
ガバッと飛び起きることってホントにあるんですね。目を開けても、夜明け前で室内は真っ暗。慌てて電気をつけようとしましたが、あら大変電気がつきません。
これでパニックに陥るなという方が無茶です。「か、火事!?」と慌てふためいてベットから転がり落ちると、ワタワタしながら窓へ。「窓が開かないぃっ!」と固定されたサッシ部分を押しながら悲鳴をあげるという古典的な慌て方を実践して、Yちゃんを少し冷静にさせたあと、2人でドアに突進。
室内同様、廊下も真っ暗ですが、非常事態を告げる赤いランプが忙しなく点灯しています。私たちが泊まったホテルは廊下の中央が吹き抜け。そこから豪雨が入り込み、廊下を水浸しにしていたんですが、それを見た私は「スプリンクラーが作動したんだ…!」と思いっきり勘違い(ちなみにスプリンクラーなんてありませんでした)。さらに雨と湿気で煙っているのを「煙だ!やっぱり火事だ!!」と断定。頭の中に「急死に一生スペシャル ホテル火事からの奇跡の生還」が駆け巡り、もう少しでほふく前進するところでした。※空気は下の方に溜まるので、煙に巻かれたときは床を這いずって進んだ方がいいらしい。けれど隣が吹き抜けの場合は無駄な気がします。
冷静に考えれば、台風が原因だとすぐ気付きそうなもんですよね。煙が充満してるわりに苦しくも何ともないし、この短い時間に屋根の下にいる私の顔をベッタリと塗らすほどの豪雨が降っているなら火も消えるわって感じなんですが、パニックになると判断力が低下するんですよ。まあ、低下するにもほどがありますが。
しかも私ったら、上記の恥ずかしい勘違いを脳内だけならまだしも大声で叫んじゃってたんですよね…。ご丁寧に1階から8階まで全てのフロアに届く吹き抜けに向かって。隣の部屋にいたTちゃん曰く、「a+rちゃんの声はものすごく響いてた」らしいので、ホテルに宿泊していた大勢の人々が私の勘違いをキャッチしたかと思うといたたまれません。
そんな私の混乱ぶりをよそに、唐突にブザーは停止。廊下と部屋の電気も回復しました。とりあえず安心したものの、気になるのでYちゃんとフロントへ行くためにエレベーターに乗り込みました。
1階のフロントまで降下する途中の階で、日本人のおばちゃんが乗ってきました。なんでもこの方、ブザーに驚いて部屋を飛び出し、そのままドアロックして締め出されてしまったらしい。私たちもドアロックしてもおかしくなかったのですが、ものすごい勢いで飛び出したため開いた状態でドアが止まっていたのでセーフ。慌てレベルは確実に上ですね。
私はパジャマ用の短パンを忘れてきてしまい、下はパンツ1枚だったのですが、一応スカートをはいて出る分別が残っていてよかったと思いました。パンツで飛び出してロックされた日にゃあ目も当てられません。
1階に到着すると、フロントのあるエリアはいまだ真っ暗です。だめだこりゃ。
呆然と突っ立っていると、その暗やみからホテル警備員が登場。手を振りながら駆け寄ってきてこう言いました。
「ノープロブレム!!」
いやいや、ちょっと待って下さいよ!
| あっち | ![]() 普段は絶対閉めないシャッターが閉まってる |
こっちで | ![]() 廊下にあふれる水をバスタオルでせき止めてる |
プロブレム大発生してるじゃないですか!
警備員が言うには、台風でブレーカーが落ち停電したために非常用ブザーが鳴ったのだとか。頼むからそんなことで鳴ってくれるな。
げんなりしつつも、あまりのことに笑いが止まらないYちゃんと私。部屋に帰り、波乱に満ちた今回の旅行について「すごいネタができたね」なんてしばらく笑い合ってました。
このときはこれが最後の災難だと思ってたんですよね……(遠い目)。
波乱に満ちたサイパン旅行の行く末はいかに!後編へ続く。
(7/3 '04)