情熱の国・スペイン旅行記 〜中編〜


 

私がスペインを訪れる前に、Nちゃんから頼まれたものがいくつかありました。日本から買ってきてほしいと。長期の海外生活、何かと不便もあるだろうとそのメールを読みすすめました。ふんふん………ふん?

『買ってきてほしいもの/わさび・すしのこ・ほんだし・ゴーグル・さきいかやかきPなどおつまみ系

彼女の身にどんな不便が起こったのか全くわからないラインナップ。特にすしのこなんて、私日本でも使いません。(寿司酢派)

動揺しながら読み進めると、謎がとけました。バルセロナは地中海に近く、魚介類が豊富な場所。ここでは新鮮なマグロ、しかもトロが安価で手に入るらしく、それを寿司にして喰おうというナイスな提案でした。さすがはNちゃん、ワーキングホリデーでオースラリアに滞在していた2年半の間、善良なケアンズ市民に寿司を振る舞っていたエセ寿司職人キャリアは伊達ではありません。ゴーグルはトマト投げの必需品、そしておつまみ系は日本人宿で重宝されるお土産だそうです。

なので、私のスーツケースにはすしのこ・わさび・刺身醤油・かきピー&さきいか山盛りが。荷物をほったらかしにしていたバルセロナ空港でもし開けられていたら、日本人に対して著しい誤解と偏見を植え付けたであろう素敵仕様でした(ジャパニーズ、イツデモ、スシ、タベマース!)。そんなのはハリウッド映画だけで十分なので、本当によかったです。

極上のトロを手に入れるべく、目指すはスペイン最大のメルカート・サンジョゼップ市場。意気揚々と出発しようとしたとき、チキートのオーナーの奥さんがさらりと一言。

奥さん「メルカートも日曜休みだったから、休み明けの今日は水揚げないから魚介類は全然出てないよ

アイヤー!とショックのあまりジャッキー並みの早送りで地団駄。仕方ないけど仕事しようよ!(次の日にはトマト投げ祭りにむけてバレンシアに飛び立つので、余裕を持ってバルセロナにいられるのはこの日だけだったのです)

日本からはるばる海を越えてきたすしのこが全く無駄になったことを嘆きつつ、観光に精をだすことに。まずは石畳のゴシック地区にあるカテドラルを目指し、歩き出しました。

数分後、メトロ・ウニベルスタッド駅に到着。そこで、とある建物が私達の目に止まりました。

バルセロナ大学です。

歴史を感じる威風堂々とした様がとってもかっこいい。「こんな大学なら死にものぐるいで勉強するよね!」と学業から離れた者だけが口にする大人台詞を呟きながら、その偉容に見とれる私達。そしてそのまた数分後。

バルセロナ大学、潜・入☆

いそいそとメガネを装着、すました表情を浮かべて才気煥発なセロナっ子にジョブチェンジ。インテリ=メガネという貧困な発想からしてすでに失敗してます。教材風に手にしたテキストが「スペインの歩き方」なところも、我ながら可哀想なぐらい知的とは言いがたい(写真を見てため息)。

ですが構内も重厚なムードたっぷりでとてもよろし!人様の役に立つことは何一つしてませんが、無事ミッション・コンプリート。


  どこもかしこも絵になる。あー勉強したい!(大人台詞)

大学を出て、とことこ歩きながらカタルーニャ駅へ。ここ周辺には、通り沿いにたくさんファッション系ショップが並んでいます。大手デパートもあるけれど、やはり路面店の方が安いし、いろいろ揃っていてかわいい!カテドラルに向かうつもりが、ゲームでもおなじみの寄り道気質が顔を出し、店を出ては次の店とショッピング三昧。

今ではかなり下火になったと思うんですが、一時期ヨーロッパで日本語が大流行りしてたじゃないですか。とくに漢字。タトゥーのパターンにも、「愛情」とか「根性」とか多用されてました。余談ですが、スパイス・ガールズの「女力」を見て、微妙な気持ちになったのは私だけでしょうか。(ガ、ガールズ・パワーってことかなあ…)

で、スペインにも日本語をあしらった服がけっこうありました。たとえばこんなの。

 

  鍋もの記念て。

一生のうち、5本の指に入るぐらいどうでもいいアニバーサリーです。製作者はこんなワードをどっから拾ってきたんでしょうか。これを買ったセロナっ娘が、意味を知ったときのリアクションが見たいです。

そして私が購入したのは番定食ノースリーブ。なにが番で定食なのかさっぱりわかりませんが、結構かわいいし、安かったので(日本円で700円ぐらい)。後ろには「MISS KIMONO」いうロゴ。「番定」と略してあるのが、意味不明さをさらにあおっていてよい感じです。友人がコレを見て、「MISS KIMONOってことはさ、その胸元、着物を意識してるんじゃない?」と謎をひとつ解明。なるほど!と手を打ちましたが、そうなると死に人仕様なのが気になります(左あわせ)。


素材がチープなのもお気に入りです。

まるでアジアのいかしたTシャツヨーロッパ版という感じで、とても面白かったです。しかし我々日本にも、外国人から見るとかなり面白い服がいっぱいでしょうね。昔の英文紙柄シャツなんて笑いの宝庫だったのでは。私の友人が子どものときに、アメリカ旅行で「POSH BOY」というメーカーの服を着ていたら、現地の柄の悪い連中に散々からかわれた(男娼とか、そっち系の意味があるらしい)話を思い出しました。そうそう、Nちゃんの友人が買った、ヨーロッパ製のTシャツの話も素敵でした。そのTシャツにはカッコいいベアーのイラストが載っていて、そばにはこんな一文が。

私は白熊が大好きです。この世の何よりも大好きです」(訳)

さらりとものすごい主張です。海外旅行の際は、外国語をあしらった服装はいらぬ誤解を生む可能性があるのでやめといた方がいいかもしれません。

そんなこんなで、買い物魂に火をつける誘惑通りをなんとか越え、観光スポット満載のゴシック地区へ。

私達の移動手段の基本は足です。観光バスは確かに楽ですけど、歩いて見知らぬ町を巡るのは、五感が刺激されてとても好き。暑気をぬぐい去る風、バルやカフェから漂う匂い、統一感ある建築物の堂々とした迫力、足から伝わる石畳の感触。特に好きなのは、建物の隙間をぬって続く路地の、秘密を共有するような心地よい閉塞感です。

バルセロナ…特にゴシック地区には、車両不可の小道がいっぱい。以前に行ったイタリアもこういう路地がたくさんありました。それに引きかえ、日本には車が侵入できない道って少ないですよね。車社会の現代においては便利なことではありますが、それだけ開かれてしまうと神秘性や一気に下降。アスファルトの整然とした道ばかりではなんか味気ない。

だから傾斜のきつい細い道が入り組んだ温泉街(草津ブラボー!)や、古都の風情ある路地・辻にはわくわくします。どこか1本入り込んだら、摩訶不思議な世界がひっそりと待ち受けていそうで。

現代に組みしていながら、どこかで現代を裏切っているような、あの魅力的な後ろ暗さがよいのです。

ただし、歌舞伎町の路地には絶対入りたくないです。あそこが裏切っているのは現代ではなく風紀秩序ですからよい子のみんなは間違えないよう注意が必要だゾ!


こういうの、大好きです。

路地で演奏するアマチュア音楽家の横で昼寝中。のんびりとして限りなく日常的なのに、どこか非日常感も醸し出していて魅力的でした。

へろへろ歩いて、ようやく最初の目的地に到着しました。

++バルセロナの観光名所 1++

カテドラル Catedral de Barcelona 

紀元前に誕生し、11世紀にロマネスク様式で再建、さらに13世紀末〜15世紀中期にかけてゴシック様式で再築されたという歴史ある教会です。信仰心を持たない不心得な私ですが、その荘厳なる美しさをぜひとも肌で感じたい!

さあ、やっと到着しましたカテドラル!

 


  なんか緑のかぶってます。

  えー……。

なんすか、このありがたみゼロな有り様は。なにをかぶってるんでしょう、思春期の少年でもあるまいし(最低)。しかもかぶりもののジャストフィット加減も見ものです。どうやってつくったんでしょうか。

どうやら運悪く修繕中の模様。ちょっと残念ですが、現在のファザードは19世紀末のもの。このカテドラルの素晴らしさは内部です!

ちなみにこの日、私はキャミソールを着ていました。教会では露出禁止なので、さっき購入した長そで服を着て入場。さっきの寄り道はきっとこのためだったのでしょう。教会はキャミソールやノースリーブ、ミニスカートなど露出は禁止なので、観光の際はお気をつけて…ってそんなの常識ですね。

じんわりと胸に染み込んでくる厳粛な空気に、クリスチャンでなくても神妙な気持ちにさせられます。見事な聖歌隊席(写真左上)の下には、バルセロナの守護聖女エウラリアの遺骨が納められた地下礼拝堂が。ステンドグラスや回廊のアーチも大変美しかったです。が、あまりに美しすぎて無神者である私には身につまされるものが。でもロウソクを手に歩いたときは、私なりの祈りを捧げました。

構内を出たところで、アヒルがのほほんと光を浴びている図(写真右上)は、平和を実感させるにふさわしい気の抜けっぷりでとてもよかった。ちなみに下の写真は天井部分です。


厳粛ムードばりばりですが、土日にはバルセロナ市民たちが集まる楽しい社交場になるそうです。なんかいいですね、そういうの。

次なる目的地は、バルセロナのランドマーク。歩きが基本とかいってるそばからメトロ(地下鉄)に乗って移動。いやいや、地下鉄も市民の空気を感じるために使わないといけないわけですよ!

 

++バルセロナの観光名所 2++

サグラダ・ファミリアTemple Expiatorio de la Sagrada Familia


バルセロナに行くなら、絶対に見逃せない超有名な建築物。天才建築家ガウディが、生涯をかけて建設にあたった偉大な聖堂です。設計を任された当初、ブルジョワ階級から援助を受け、信仰にも無感心だったガウディ。そんな自分が貧しき人々の心の支えとなる聖堂を手掛けることに疑問を感じ、一時は断食して死にかけたほど悩み苦しんだとか。そして次第に信仰に目覚め、ブルジョア派から離脱。建築界から孤立しても、大衆のための教会をと取り組み続けたガウディの未完の大作。その名は……!

「バルセロナといえばあれだよね、サクラダ・ファミリー!」by友人

とりあえず友人はガウディに土下座して謝って下さい。

スペインまできて桜田一家と邂逅か。ていうか誰だよ桜田ファミリーって。もしその中に順子がいたら合同結婚式開催されたり、入場券と一緒に壷を売られたりしそうです。

気を取り直して、違いがわかる男のゴールドブレンド、サグラダ・ファミリア!

 

絶賛工事中!

いや、サグラダファミリアが着工から120年以上経過しているのにまだまだ全然未完成ってことは知っていたのですが、これほどに工事中とは。外見はまだいいとしても、内部は

 逃げも隠れもできないほど「工事現場」。こりゃ大変です。

内部に入ると、見ちゃいけない裏事情を覗き見しちゃったような感じる必要のない罪悪感をちょっぴり抱くサグラダ・ファミリアですが、斬新な形状の鐘楼や繊細かつ雄大なファサードなど、観る者を圧倒させずにはおれない力強い迫力があります。

特に圧巻なのは、ガウディの生前に唯一完成した「生誕の門」。希望・信仰・慈悲の3パートに分かれた世界を、ものすごい緻密な彫刻で表現してあるのです。なんというか、一種の執念もいうべき異様なまでの妥協のなさ。間違いなく、造り手の命の欠片が注ぎ込まれています。ずっと観ていると、魂を吸い取られそう。とにかく魅力的です。

そしてこの荘厳な門は、こんな種族によって支えられています。


 ほのかに動物虐待の図。

 「…お…重いヨ……」 

 無茶だよガウディ!


鐘楼には暗くて狭くて高い螺旋階段があり、登ることができます。こんなのが(写真左)延々続くので、面堂終太郎(c/うる星やつら)じゃなくても絶叫したくなります、特に私のヒザが。またもや螺旋怪談ですよワハハハハ!←ヒザの笑い声

しかし途中途中でバルセロナの町並みが眺められますし、鐘楼から見る別の鐘楼(写真右)というのも、下から見上げるのとはまた違う趣があって素晴らしい。笑うヒザなんて笑い飛ばせるほど素敵な景色です。

地下には美術館があり、ガウディ自らが作った模型も展示されています。現在2つの門と8本の鐘楼が完成していますが、計画によるともうひとつの「栄光の門」に4本の鐘楼、そして中央に5本の塔が建設される予定だとか。要するに、サグラダ・ファミリアはまだ半分しかできてないわけですよ!びんぼっちゃまの服みたいなもんなんですよ!(後ろ裸だ!みたいな)

すげえなガウディ…!


ガウディの死後に完成した「受難の門」

完成にはあと100年かかるって、そんなものを設計できる頭の構造からして並じゃないです。もう天才なのかなんなのか、とにかく偉大な人物としか言い様がない。この他に類を見ないデザインもホント素敵だ。そして、その100年のうちに完成してる部分が老朽化するから修繕しなきゃいけないというユニークな未来予想図も素敵だ。

資金さえあればかなり早く完成するらしいんですが、完成を急ぐあまりガウディらしくない構造にしたり建材を使ったりするのは本末転倒の気がするので、マイペースにやってほしい。ガウディが庶民のためを思い、庶民のために設計したそのままの聖堂を誕生させてほしいものです。


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