情熱の国・スペイン旅行記 〜前編〜


 

カタルーニャ鉄道で約30分、バルセロナの中心・カタルーニャ駅に到着。時刻は14:00頃。友人Nが予約してくれた宿は、カタルーニャ駅から地下鉄で一駅、ウニベルシタット駅からすぐ。ということで、地下鉄=メトロ初体験です。

料金は一律1.05ユーロ(1ユーロ120円前後)。乗車券は入場するときのみ必要で、出口には押すだけの柵(形状は駅により異なる)があるだけ。従ってスペインの地下鉄、キセル大推奨。柵を潜る、または飛び越えて入っちゃえば後はノープロブレム。ウニベルシタット駅の出口の柵から普通に入場するキセラーを何人も目撃し、メトロの運営予算が心配になりました。

時を経た味のある建物に囲まれた町並みを進み、老舗の日本人宿「チキート」に到着。重厚なドアに螺旋階段という、いかにもヨーロッパのアパートメントな造りに興奮して美辞麗句をまくしたてる私でしたが、5分後には沈黙してます。

正確にいうと、沈黙というより虫の息でした。


スーツケース(約20kg)抱えてなきゃ
素敵なんだがなあ……。

なぜってそれは、チキートが3階(実質的には5階)にあるから。そしてアンティーク・アパートメントにはエレベーターなんてものはないから。荷物抱えての螺旋階段は、ココしばらくパソコンにかじりついて引きこもり状態だった私にとっては螺旋怪談です。まるで武者修行のよう。宿の入口に着いたときには達成感のあまり笑いが止まりませんでした、主に膝が。日頃の運動不足を痛感致しました。

旅慣れてない私のために、Nちゃんが選んでくれたこの宿。日本語対応のネット用パソコンあり、キッチンあり、洗濯機ありと個人旅行者にはかなり過ごしやすい。部屋も小奇麗です。

シャワー・トイレは共同。シャワー時間が23:30までと決まっているのがちょっと痛いですが、マナーさえ守れば居心地のよいところです。(少しでもおいたをすると、オーナーの奥さんの心底嫌な顔を見ることことができます。ごめんなさい)

1泊20ユーロ(ツイン40ユーロだから折半)と、日本人の感覚なら安いと感じる料金ですが、節約に節約を重ねるバックパッカーにとってはちょい高めらしい。しかしみんなが集まる交流ルームではコーヒー飲み放題、本棚には日本の漫画や小説がたくさん。私はまさかバルセロナにきて「男一匹ガキ大将」に出会うとは思いませんでした。いやあ、驚きました。


左から宿の入口・アパート玄関・部屋の鍵。右2つの役立ずっぽい頼りなさがたまりません。

一息ついたところで、猛烈にお腹が減ってきました。荷物をおいて身軽になった私達、宿近くにある「バル」へ。

 

++スペインの定番 1++

バル Bar 


こんな風にどーんと並んでいるので、
欲しいものを指差して注文。もちろん
内容は店によって様々です。

バルとは誰でも気軽に立ち寄れる、スタンド形式の食堂&バーのこと。居酒屋と喫茶店を足したような店です。どんな田舎町にも必ず一軒はあり、たいがいは昼間から夜まで営業。地元民が集まる社交場でもあるので、おおらかなスペイン気質を体感するのも大変楽しい(平日でも真っ昼間からビールやワインかっくらっってます)。新しい町に着いたら酒場をのぞくのはリアルでもゲームでも鉄則です。ただし、お店の棚を開いてアイテムをゲットしたり、へそくりをくすねたりすると窃盗でしょっぴかれますからよい子のみんなは気をつけてね!

カウンターにはスパニッシュオムレツやイカフライ、マッシュルームのオリーブ炒め、カラコレス(エスカルゴの赤ワイン煮)など様々なメニューがずらり。

お隣のイタリアや世界三大美食のひとつ・トルコに比べると、スペイン料理の評判ってあまり耳にしないんですが、これがマジうまい!味付けも日本人好み(イタリア料理が好きな人なら絶対好き)だし、なにより素材の野菜やシーフードがおいしいんです。

快く送りだしてくれた相方さんにも食べさせてあげたい…と切ない思いを秘めつつ、「うめえ!」と連発しながらガツガツ喰らう女2人組。ご当地料理のおいしさは、旅の楽しさを5割増にしてくれますね。


喧嘩上等って感じですが、日本文化に
根付いた感覚を他国に求めちゃあいけません。このオムレツ、最高でした。

満腹になり、早くも心は「スペイン最高!」。こういうリーズナブルな性格は、けっこうお得だと思います(自画自賛)。腹ごしらえもすんだところで、さっそく市内観光に出発。

Nちゃんと喋りながらテクテク歩いていると、あることに気付きました。立ち並ぶ販売店の、9割以上がお休み中なのです。

スペインには「シエスタ(Siesta)」という習慣があります。14:00〜16:00頃は会社もお店も閉めて、文字どおりシエスタ(お昼寝)したり、仲間や家族とバルで過ごしたりと日本で真面目に働いてるのが嫌になるようなステキ習慣。だからかなと最初は思ったのですが、シャッター降ろして錠前ガシャーンと閉まり方が手加減なし。で、よくよく考えたら、この日は日曜。客が休みなら店だって休むぜ、と。接客業は休日が勝負という日本の感覚からはかけ離れてます。国民性の違いを目の当たりにして、なんだかとても愉快でした。

そんなこんなでブラブラしながら、バルセロナの観光名所のひとつに到着しました。

 

++世界遺産++

カサ・ミラ[Casa Mila


壁、天井、どこにも「直線」はないのです。
まあ床はうねってたらヤだから例外。

19世紀末、アール・ヌーボーとほぼ同時期にバルセロナ地方で巻き起こった芸術運動・モデルニスモ。その立て役者のひとりである天才建築家・ガウディの晩年の作品です。

このカサ・ミラ、バルセロナの町並みに普通に溶け込んでいます。いかにも世界遺産然とした建物もいいけれど、ここは近い分愛着がわきそう。まあ集合住宅ですから、身近じゃないといかんわけですが。でもやっぱり、近付いて見上げると「他と一緒にしないで頂けるかしら?」という品格があります。腐っても鯛ですね!(←激しく間違ったことわざの使い方)

緩やかな曲線の外壁といい、岩山を連想させるおもしろい形状といい、さすがはモデルニスモ建築の傑作。屋上にぼこぼこ立ち並ぶユニークな像は、なんと煙突!なんちゅー面白い煙突でしょうか。サンタクロースへの挑戦状って感じで非常に好き。自由な発想とひねりの効いた表現力、素晴らしいです。

とまあ、見所満載な世界遺産をものすごい駆け足で後にする私達。だ、だって闘牛が18:00からで…!カサ・ミラに着いたのが17:30で…!すまんガウディ。


屋上の愉快な煙突たち。フェンスがなきゃもっといいのにな。

なぜか感じる後ろめたさをごまかすように、「ガウディ、すごいよ!」「ブラボー、ガウディ!」とボキャブラリー皆無の台詞で誉めたたえつつ、バルセロナ最大の闘牛場・モヌメンタル闘牛場へダッシュ!

 

++スペインの定番2++

闘牛Toros

やってきました闘牛場!闘牛は見る場所によって値段が全く違います。私達が選んだのはもちろん「一番安い席(18ユーロ)」。そして入場し、係員の指示に従って席につきました。さてさて、闘牛の様子は……

 ………遠っ!! 


牛、ちっちゃ!

私達が座ったのは日向の3階席。渡した紙幣が薄ければ、迫力も薄いわけです。まあ仕方ありません。

闘牛は1回のショーで、3組の出演者たちが2回ずつ、計6回の闘いを繰り広げます。

闘いの進行を牛視点で説明すると、

『表がピンク・裏が黄色の襟付きマントで翻弄された後、馬に乗ったピカドールに槍で突かれたかと思うと、パンデリリェーロに2本の銛を3回突き立てられ、満身創痍のところを赤い布(ムレタ)と剣を手にしたマタドールにとどめを差される』

 

 


マタドールと牛が戦う「ムレタの場」

身もフタもない感じになりますが、それを考えはじめると闘牛の面白みが一気にダウンし、動物愛護団体の動きがなぜか知りたくなってくるのでやめておくといいですよ!

あ……  ふーやれやれって後片付けしてヒド気にしちゃダメです!

            

圧倒的な強さを誇る牛に、果敢に挑む闘牛士。不利な状況のなかで自身の技術と勇気を武器に、命を賭けて立ち向かう勇猛で華麗な姿こそが闘牛の醍醐味であり、現在まで続けられてきたゆえんなのです。

闘いの大詰めであり、クライマックスである「ムレタの場」は、マタドールの腕前がよくわかる場面。向かってくる牛の肩甲骨部分=急所を、どれだけ正確に剣で刺せるか。見事突き刺さると、牛は即倒れます。

2番手のマタドールは、大変上手でした。一発命中したのです(1番手は数回刺してました)。問題は3番手です。

 

圧倒的な強さを誇る牛に……

 

 

数人がかりで果敢に挑む闘牛士たち

こうなってくると圧倒的に不利なのはどう見てもです。


いじめの現場。

しかもこのマタドール、この状態でもなかなかとどめをさせない。数人で囲んで逃げ場をなくした上で、グサグサグサグサグサグサ。この人刺し過ぎです闘牛士の華麗な動きには、普通「オレ!」というかけ声がかかるものですが、この場合のかけ声は「いじめ、カッコワルイ。」しか浮かびません。そして場内に沸き起こるブーイングの嵐。

血まみれでヨロヨロになって果てていく牛に同情を禁じ得ない私達。絶命した牛を会場の外へ運んで行くのは3頭の馬。なんとなくアンニュイな様子で横たわる牛に近付いていく馬たち。まるで牛を哀れんでいるようだわ…と思ったのもつかの間。


こいつらは何をそんなに急いでいるのか。

余韻などなぎ払うかのように猛スピードで引きずっていく馬。しかも途中で脱糞。

こ、こ、コラァーーー!!

これも一種のいじめです。ブルータス、お前もか!!


問題アリアリの3番手が終わり、1番手が2回目の闘いを繰り広げるところで眠気に襲われはじめる私達。3階だと迫力がない上に、展開は同じなのでどうにも集中力がかけてくるのです。お互い強行スケジュールを押してきたことも響いてます。牛も可哀想だし、もう十分だ…という結論に達し、会場を出ることにしました。

しかし階段を降り、1階まできたところで気付きました。入場したときに各出入り口に立っていた係員が誰もいないことに。……数秒後、1階・真ん前に陣取っている私とNちゃん。ほら、だって、席も空いてたし……すいません許して…(誰に言い訳してんだ)。

目の前で繰り広げられる、上手なマタドールがいる2番手のショー。闘牛士たちの機敏な動きや、向かってくる牛の恐ろしさに目を奪われます。やっぱり1階だと迫力が全く違う。

そして闘牛とマタドールの一騎討ち。またも一撃入魂!急所にぐっさりと刺さった剣の生々しさ、ドォッと牛が倒れ込む音…3階では伝わらなかった臨場感に息を飲みます。さっきの眠気はどこへやら。大きな拍手と歓声に、手を上げて応えるマタドール。と、そのとき。一度倒れたはずの牛がヨロヨロと立ち上がりました。どよめく場内。一歩進むごとにバタ…バタ…と大量の血を落としながら、懸命に歩む牛。その壮絶な様子を固唾を飲んで見守る観客。そんな鬼気迫る様子の牛が自分達の方へ近付いてくることにおののく私。

お、おっこと主様ぁ……!!(byもののけ姫)

そして私達の目の前でズゥンと倒れ、絶命。再び拍手と歓声に包まれる場内。でも私たちは長い間無言でした。

「最期に目が合ったよ…!あの牛、私を見てたよ…!」とジャニーズのコンサートに行った熱狂的ファンみたいなことを口走って動揺する私。Nちゃんは気分が悪くなった様子。やっぱりここを出よう…力なく呟いて席を立ち、裏へまわりました。さらに衝撃的な光景を目撃することも知らずに。

 

私→(゚Д゚)(゚Д゚)←Nちゃん

 

※血とか苦手な人は見ない方がいいです。気分が悪くなる可能性がありますのでご注意下さい。大丈夫な人はスクロール

 

 

!?      

!!

 

!!!

もう解体されてます。

今まで闘った牛が、変わり果てた姿で整然とぶら下がってますよ!そして、さっきのタタリ神になりかけのおっこと主様が吸い込まれていきましたよ!

「死んだ牛はどうなるんだろう、もしかしてただ殺すだけ?」

最初に絶命した牛を見てから悶々と反すうしていた疑問の答えが、鮮やかカラー(特に赤)で目の前に展開しています。解体して喰うんだよ!と、みのもんたに尋ねられるまでもなくファイナルアンサー。

まさか闘牛場内に解体場があるなんて、しかも速攻で解体するなんて思いませんでした。

解体場の扉は閉じられましたが、あまりの衝撃に私達の口は閉まりません。つっ立ったまま閉ざされた扉を見つめる私達に、さらなる衝撃が!

 

美しい放物線を描いて飛んでいく牛の足。


しかも壁に当たって「カーン」ていった!「カーン」ていった!!(大混乱中)

そして壊れる私達。なんというかもう、コレはありですよ。ただ娯楽のために6頭も殺すんじゃないんです。ちゃんと解体するんです、食べるんです!さっきまで渦巻いていた闘牛へのわだかまりは霧散しました。これは立派な伝統的エンターテイメントです。

実はこのとき、写真は撮れませんでした。てゆーか写真など撮れる心理状態ではありませんでした。

もう一回闘いがあるから、そのとき撮ろう!とやる気満々のNちゃん。どうやら彼女の中の「パー子魂」が目覚めた模様。「もうしばらく牛は食べれん」とヨロヨロと席を立った5分前とは別人です。

そして再度席につく2人。闘いをしているのは牛イジメの3番手。このマタドール、やっぱりイマイチです。上手だった2番手のマタドールと比べると、避け方や布の扱い方、牛の注意の引き方が、今日初めて観たド素人の私にもわかるほど甘いのです。2番手のマタドールは颯爽としていて動きにキレがあり、観客をドキドキさせると同時に安心感も与えていたのに対し、3番手は観ているとハラハラして嫌な汗かきっぱなし。3人3様の闘い…これも闘牛の面白さでしょう。

と、そのとき。懸念した通りやられました!突進を避けきれず、持ち上げられて放り出されるマタドール!騒然とする場内。幸い角は刺さっていなかったけれど、脳震とうを起こしたらしく一時退却。しかし数分後、再び牛の前に立っていました。ついさっきあれほどの目に遭いながらも、再度挑めるその心意気やよし。最初のイジメのことは忘れてあげます(偉そうに)。

マタドールの孤高のプライドに感動した後、大急ぎで解体場へ。すると最後のショーだったからか、私たち以外の観客も大勢集まっています。馬に運ばれてきた牛を囲み、その体をペチペチと叩く人々。まるで相撲の巡業@闘牛・解体場前です。小さな子どもも混じってペチペチ。いいんだろうか…。


おさわり自由です。

今まで抱いていたイメージとは全く違う闘牛の魅力を満喫し、闘牛場を後にしました。

その後、ガイドブックに載っていた店で夕食をとろうとして散々迷い、やっと辿り着いてみたら休日/8月というビックリなオチにカラ笑い。8月いっぱいバケーションだってワハハ!仕事しようよ。(迷って疲労ピークなので国民性がうんたらとか言ってる余裕なし

仕方ないのでカタルーニャ駅近くの目に着いたバルで食事。スペインやイタリアは8月中休んでる店がけっこうあるので注意しましょう。

カタルーニャ辺りは大層な繁華街なので、夜でも意外と安全。でも一本路地に入ると途端に物騒なので気をつけながら、宿へ帰ってきました。夢うつつでシャワーを浴び、ベットに倒れ込むようにしてあっという間に眠ってしまいました。


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